狭心症

狭心症について

心臓は全身の臓器や筋肉に酸素と栄養を運ぶために血液を送り出しています。

もちろん心臓自体の筋肉にも酸素と栄養が必要です。

この役割を担っているのが冠動脈と言われる血管です。

この冠動脈は心臓から出ている胸部大動脈の根元から左右に分岐し各々が枝分かれして心臓の筋肉に血液を供給しています。

狭心症は、この冠動脈内の内腔が狭<なることが原因で起こる疾患です。

典型的な症状は左前腕部の痛みですが、左肩、首、顎の痛みとなって現れることもあります。

ここで「痛み」と表現してしまいましたが、実際は「重苦しい」とか「締め付けられる」とかいったやや漠然とした苦しさです。

高齢者、糖尿病の方には症状がはっきりしない場合もあります。

 

この狭心症は病態により大きく2つに分類され治療法も異なります。

1) 労作性狭心症

 運動時には心臓の仕事量が増加します。

   心臓の筋肉に必要な酸素、栄養も増えますが、これが不足し一時的な虚血状態となると胸

   部などに症状が出ます。

   原因は動脈硬化による冠動脈内腔の狭窄です。

 症状の持続時間は長くて15分程度であリ安静やニトログリセリンの舌下服用(舌の裏

 側にニトログリセリの錠剤を入れる)により改善します。

 

2) 冠攣縮性狭心症

 冠動脈を構成する血管内皮細胞には血管を拡張させる物質を分泌させる働きがあります

 が、この機能が動脈硬化などにより障害されたり、その他の何らか原因で血管に痙攣発

 作が起きる場合があります。

 これにより血管の内腔が狭窄または閉塞すると心臓が虚血状態となリ狭心痛が発生しま

 す。

 発作は夜間から明け方に多<、運動とは無関係に発作が起きるという特徴があります。

 また、労作性狭心症と冠攣縮性狭心症が合併する場合もあります。

 したがって、両者をはっきり分けるのではなく、労作性狭心症にも冠攣縮が起こりうる

 という考え方を診察する医師は持っておく必要があります。

 

 

狭心症と心筋梗塞の違い

 冠動脈が完全に閉塞すると心臓の筋肉(心筋)が壊死します。

 この心筋壊死という状態は、筋肉が死んでしまうわけですから元には戻りません。

(少し詳しくいうと一時的に「気絶状態」になったり「冬眠状態」になったりする場合

 もあります)

 この状態が心筋梗塞であり長時間の強い痛みを伴い合併症による死亡率が高く、緊急の

   治療が必要となります。

 狭心症状悪化の「前ぶれ」(前駆症状)が認められる場合もありますが、突然発症する

   ケースが多くの割合を占めています。

 このことが大変重要で、昔の医学ではだんだん血管内腔が狭くなってくると考えられて

   いました。

 つまり、突然発症することが多いという実臨床との矛盾に世界中の医師は気づかなかっ

   たのです。

 比較的最近になって血管内腔が突然詰まる機序がわかって来たました。

 

 

狭心症の原因

 ほとんどが冠動脈の動脈硬化が原因です。

 冠攣縮性狭心症については、動脈硬化がどの程度まで関わっているのか議論が分かれま

   す。

 狭心症になりやすい危険因子には

 1. 高血圧 2. 糖尿病 3. 脂質異常症 4. 肥満   5. 喫煙 6. 加齢 7. 家族歴

 があります。

 動脈硬化の進行を予防するには生活習慣の改善や薬物治療の介入が必要となります。

 

 

狭心症のタイプはさまざま

必ず胸の痛み”が起こるわけではない。

さまざまなタイプがあることを知っておこう。

 

① 動脈硬化型

典型的な症状が現れるタイプ

□ 締めつけられるような胸の痛み

□ 強い動悸

□ 息苦しさ

□ 冷や汗

□ 吐き気

 

症状が5~10分間ほどで治まる → 狭心症

 症状が治まったからと安心せずに、必ず医療機関を受診する。

 

症状が5~10分間ほどで治まらない、長く続く→ 心筋梗塞の可能性

 症状が長く続き、つらく、脂汗が出るようなときは、すぐに救急車を呼ぶ。

 

関連痛が現れるタイプ

階段を上るなど体を動かしたときや興奮したときなどに、歯や腕など、いつも同じ場所が痛む。

「肩こり」や「胸焼け」を感じることもある。

□ 心臓と離れた場所が痛む

 

症状を感じにくいタイプ

□ 糖尿病がある人

□ 高齢者

 

糖尿病や加齢の影響で神経に障害が起きていると、痛みを感じにくくなる。

 

1年に1回は心臓の検査を

・問診 

・心電図検査

(安静時心電図、運動負荷心電図、ホルター〈24時間〉心電図)

・画像検査(CT検査など) など

 

②  血管けいれん型

安静時に起こるタイプ

□ 睡眠中の深夜、または早朝に症状が現れる

□ 喫煙している

□ 働いている世代

 

冠動脈が一時的に狭くなって、症状が現れる。

喫煙やストレスが発症に関係している可能性がある。

 

参考•引用 

「きょうの健康」 2017.11

 

 

 

検査

複数の検査をして原因やタイプを見極める

狭心症や心筋梗塞が疑われる場合は、問診や次のような検査が行われます。

問診では、症状や症状が現れた状況、ほかの病気などについて詳しく医師に説明をしましょう。

狭心症の多くは、問診によっておおよその判断ができます。

 

院長コメント

狭心症や気管支喘息や腰痛(椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄証)や閉塞性動脈硬化症(足の狭心症ともいわれます)など問診がとても重要な病気が数多くあります。

その中でも狭心症は問診が、特に診断に役立ちます。

 

必ず行われるのが、心電図検査です。

最も一般的なのが安静時心電図で、横になった状態で15秒間ほど測定します。

運動負荷心電図は、運動をしたときに狭心症が起こるかどうかを調べられるので、動脈硬化型の狭心症の発見に有効です。

ホルター(24時間)心電図は、携帯型の心電計を装着して24時間の心電図を記録するもので、夜間や朝方に起こる血管けいれん型の狭心症の発見に役立ちます。

 

 

心電図検査などで狭心症が疑わしい場合、画像検査を行い、冠動脈の狭くなっている場所やその数などを詳しく調べます。

 

1. 心電図

  非発作時の心電図では異常が認められないことが多い為、運動をした前後の心電図所見

  を比較することが行われます(運動負荷心電図)。

  主に労作性狭心症を診断する目的で行われます。

  当院ではこの運動負荷心電図にワイヤレス心電計が活躍しています。

 

2. ホルター心電図 (24時間心電図)

  携帯型の心電図装置で日常生活中の心電図記録を行います。

    発作時の心電図を記録することが目的です。

  この検査は主に不整脈のチェックを目的として行われることが多いのですが、器械を

    装着中に意識的に階段の昇降をすることによって狭心症の診断がつくことがありま

 す。

  院長は勤務医時代にはこのホルター心電図の研究を行い国際学会などで発表していま

    した。

 

3. 冠動脈CT

  冠動脈の状態を診断することを目的とした造影CT検査です。

  以前は冠動脈の画像診断においてカテーテル検査が中心的な役割を果たしてきました

    が、CT装置の性能が良くなリ近年盛んに行われるようになっています。

    病変部位の石灰化か強い場合は狭窄評価が困難な場合があります。

 

4. 心臓カテーテル検査

  局所麻酔を行った後に体内にカテーテルを挿入。

  冠動脈内に直接造影剤を注入し撮影する検査です。

    冠動脈CTと比べてより詳しく 冠動脈の状態を知ることができます。

 また、病変があった場合にカテーテルを使って治療することもあります。

 石灰化のチェックには冠動脈CTの方が詳しくわかります。

 

治療

 冠攣縮性狭心症に対しては薬物治療が行われますが禁煙を含めた生活習慣の改善も

 要です。

 

 労作性狭心症に対しては、冠動脈所見と合併している疾患によって治療法が異なりま

 す。

 一般的には薬物治療が基本ですが、狭窄が高度な場合には内科医によるカテーテル治療

 か外科医によるバイパス手術のどちらかが行われます。

 

 これらの治療後も再発予防のため薬物治療や生活習慣の改善を継続することが必要で

 す。

 軽労作でも発作が起き易<なり、発作時間が長くなったり、発作がおさまるまでに長い時

 間がかかるようになった場合は心筋梗塞発症の危険が高い状態です。

 この状態を不安定狭心症とか切迫梗塞と呼びます。

 

 この場合には早期に医療機関へ受診することが必要です。