ピロリ菌

ピロリ菌とは

胃がんになった人の約99%が感染している

胃がんの原因として最も重要視されているのが、胃に住み着くピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)で、胃がんになった人の約99%が感染している。

ピロリ菌に加え、塩分のとり過ぎ、喫煙、加齢などの危険因子が加わると、さらに危険性が高まる。

 

ピロリ菌は自然界にはほとんど存在しない細菌で、主に人の体内に生息している。

それが口から侵入して、胃の粘膜に住み着く。

感染するのは、免疫の働きの弱い5歳頃までだ。

 

上下水道が十分に整備されていなかった時代には、不衛生な水を飲むことで、感染が起きていたと考えられる。

そのため、感染者の割合は高齢の人ほど多くなっている。

60歳以上の人のおよそ7割が感染しており、感染率は若い人ほど低くなる。

 

⬛︎ ピロリ菌の毒素により胃炎が起きる

ピロリ菌は粘液の中に生息し、胃酸から自らを守るため、アルカリ性のアンモニアを産生している。

ピロリ菌が長い間住み着いていると、菌が出す毒素で粘膜が障害され、炎症が起こる。

この状態をピロリ感染胃炎という。

 

胃炎が続いていると、障害された部分が修復しきれなくなり、深くえぐれ、胃潰瘍になってしまう。

そして、胃炎で弱った粘膜には、胃がんが発生しやすくなるのだ。

 

ピロリ菌の検査 内視鏡検査で組織を切り取って調べる

ピロリ菌に感染していると胃がんを発症する可能性があるため、感染の有無を調べておくことは意味がある。

 

胃痛、特にみぞおちの痛みなどの症状があれば、医療機関を受診して内視鏡検査を受ける。

症状がなくてもピロリ菌に感染していることは多いので、感染の有無を知るためには検査が必要だ。

遅くとも40歳になったら受けたほうがよく、身近な人が胃がんになった場合も、検査を受けることが勧められる。

 

検査には次のような方法がある。

● 内視鏡検査・・・内視鏡で胃の表面を観察する。これで判断できない場合は、内視鏡で粘膜の組織を採取し、ピロリ菌がいるかどうかを調べる。

 

● 尿素呼気試験・・・通常の呼気と、尿素を含む検査薬をのんだ後の呼気を比較する。

ピロリ菌は尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解するので、感染していると、検査薬をのんだ後の呼気に特殊な二酸化炭素が多くなる。

 

● 抗体検査・・・血液または尿の中に、ピロリ菌の抗体があるかどうかを調べる。

 

● 便中抗原検査・・・ピロリ菌の一部は便として排泄されるので、便の中にピロリ菌がいるかどうかを調べる。

胃痛、特にみぞおちの痛みなどがある場合は、胃潰瘍や胃炎、胃がんの可能性もあるので、まず内視鏡検査を受ける。

 

胃潰瘍や胃がんがなく、痛みもなくても、内視鏡検査を受け、それ以外のピロリ菌検査で感染がわかれば、ピロリ感染胃炎と診断される。

 

症状のない人が感染を調べる場合も、胃がんをより正確に見つけるために内視鏡検査、それ以外のピロリ菌検査の順に受けることが勧められる。

内視鏡以外のピロリ菌検査、内視鏡検査の順に受けると、保険適用外となる。

 

ピロリ菌の除菌治療 合計3種類の薬を1日2回、7日間のむ

ピロリ菌の除菌治療では、2種類の抗菌薬と、胃酸の分泌を抑える薬を、1日2回、7日間服用する。

服用終了後4週間以上あけて、ピロリ菌の検査を受ける。

まだピロリ菌がいる場合には、抗菌薬の片方を別の抗菌薬に変え、再び3種類の薬を7日間服用する。

 

1回目の治療の成功率は約70%で、2回目は約90%。

2回目までに約97%の人が除菌に成功する。

ここまでは健康保険が適用される。

3回目以降は健康保険が使えないが、3回目の治療まで行うと成功率は約99%になる。

 

極めてまれだが、抗菌薬によってアレルギー性のショック症状が起こることがある。

体の異変が起きたときにはすぐに受診する必要がある。

 

除菌治療が成功すると、胃の粘膜はきれいになり、胃がんのリスクはある程度低下する。しかし、長年の感染で粘膜はダメージを受けており、胃がんのリスクがなくなるわけではない。

除菌治療後も定期的な内視鏡検査が勧められる。

 

 

まとめ

 

ピロリ菌の感染年数を少しでも短くすることで、胃がんになる可能性を低くすることができる。

 

参考

きょうの健康 2015.2

 


ヘリコバクター・ピロリ

ヘリコバクター・ピロリ(以下ピロリ頭)は胃の強酸性下で生育出来る特殊な菌でヘ

リコはヘリコプターのヘリコと同じ<旋回・らせんを表して、バクターは細菌の意味です。

ピロリは好発部位の胃の幽門を表すラテン語のピロルスに由来します。

 

ピロリ菌は胃の中の尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解し、アンモニアで酸を中和することにより強酸の中でも生存します。

 

ピロリ菌は酸素下では発育不可のグラム陰性桿菌で100年ほど前から胃内にらせん状

の細菌が存在するという説はありましたが、強酸下での生物の生育は不可能という当時

の常識により、この説が支持されることはありませんでした。

 

1979年オーストラリアのロビン・ウォーレン教授が胃炎患者の組織中のらせん状菌を

発見し共同研究者のバリー・マーシャル教授と苦労の未培養に成功、更になんとマーシャ

ル教授は培養したピロリ菌を自ら飲み込み自分の胃に急性胃炎を発注させ、その組織か

らピロリ菌を証明するという勇敢な実験にも成功し胃炎や胃・十二指腸潰瘍はピロリ菌

の感染が引き金になることを明らかにしました。

この功績をたたえ両氏は2005年にノーベル生理学・医学識を受賞したのです。

 

現在ではピロリ菌の感染は胃炎、胃・十二指腸漬瘍、胃癌やMALTリンパ腫やある種

のB細胞性リンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病や小児の鉄欠乏性貧血、慢性蕁麻疹な

どの疾患の原因と考えられています。

 

胃癌についてWHOは胃癌の原因の80%はピロリ菌が原因で胃癌の予防にはピロリ菌

の除菌が有効と認定しています。

ピロリ菌は5才前に感染すると持続感染となり経過とともに萎縮性陽炎となり、これが胃癌の発生母地となると考えられています。

つまり若年者に感染対策を行い、約3%と言われる若年者のピロリ菌感染者に2種類の抗箇剤と抗潰瘍薬による除菌を施行すれば将来的に胃癌の患者数は大幅に減ると思われます。

 

一部の地方自治体では、15才未満のピロリ菌検査について公費負担による実施を検討中です。

 


ピロリ菌の治療―除菌について

https://medicalnote.jp/contents/150601-000006-THAYCM

 

•ピロリ菌の除菌治療が保険適用となっている疾患

   ピロリ菌陽性の胃潰瘍・十二指腸潰瘍

  胃MALTリンパ腫

  特発性血小板減少性紫斑病

  早期胃癌に対する内視鏡的治療後

  ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染胃炎

 

•ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染胃炎の確認のためには、以下の(1)及び(2)の両方を実施する必要がある。

(1)ヘリコバクター・ピロリ感染の確認

    迅速ウレアーゼ試験・鏡検法・培養法・抗体測定・尿素呼気試験・糞便中抗原測定

(2)上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)により、慢性胃炎がみられることを確認。

   (または胃透視にて胃潰瘍を確認)

 

•ピロリ菌は「ウレアーゼ」によりアンモニアを生み出すので、胃酸を中和する作用がある。

除菌すると胃液の酸度が元に戻るため、胃酸による症状が一時的に悪化することがある。

そのため、ピロリ菌を除菌して5年以内で逆流性食道炎の症状が20%程度の頻度で出現する。

 

•1次除菌で70%以上の方が治癒できる。

2次除菌まで行った場合は、全体の90%以上の方が治癒できる。

かつては、80%以上が1次除菌で治癒できていた。

 

しかし、最近はクラリスロマイシンへの耐性菌が増えてきたため、少し下がって70%台になってきている。