良性発作性頭位めまい症

良性発作性頭位めまい症

 

良性発作性頭位めまい症の特徴は、頭を特定の位置に動かしたときに、めまいが起きることだ。

ほとんどの人は治療で改善する。

同じ向きで寝ないなど、注意しよう。

 

良性発作性頭位めめまいとは 頭の位置を変えたときに激しいめまいが起きる

良性発作性頭位めまい症は、めまいを引き起こす代表的な耳の病気だ。

めまい全体の20~40%は、この病気によるものだといわれている。

中高年の女性に多い傾向がある。

 

めまいが起きるのは、頭をある特定の位置に動かしたときだ。

発作的に回転性の強いめまいが起こる。

めまいは長く続くことはなく、数秒から2~3分程度で治まる。

ただし、こうしためまい発作を何度も繰り返すのが特徴だ。

めまいを起こす頭の位置は、人によってさまざまだ。

 

良性発作性頭位めまい症のめまいは、三半規管の中にたまっている耳石が、移動することで起こる。

耳石は耳石器についているカルシウムの小さな粒だが、そこから剥がれ落ち、三半規管の中に入ってしまうことがある。

 

三半規管は半円状の半規管が3つ集まった構造をしている。

それぞれの半規管は内リンパ液で満たされていて、管の内側にゼラチン状のクプラという神経の一部がついている。

 

頭の位置を変えると、三半規管の中にたまっていた耳石が動く。

それと一緒に内リンパ液が動き、それによってクプラが内リンパ液の動きを感じ取る。

これが原因となって、めまいが引き起こされる。

めまいは耳石が動いているときだけ起こるので、短時間で治まる。

 

めまいのほかに、気持ちが悪くなって、吐き気を催したり、吐いてしまったりすることもある。

音を間く働きをしている蝸牛には障害が起きないため、難聴や耳鳴りなど、聴覚の障害は起きない。

 

良性発作性頭位めまい症の症状

□ グルグルする強いめまい

□ すぐに治まる

□ めまいを繰り返す

 

これらのめまいの症状のほかにも、強い吐き気を伴う場合や、嘔吐する場合がある。

難聴や耳鳴りといった聴覚の症状はない。

 

 

■なぜ、耳石が剥がれ落ちるのか

耳石器から耳石が剥がれ落ちる原因はいくつかある。

 

1つは衝撃だ。

スポーツなどで頭を打ったりすると、その衝撃で剥がれてしまうことがある。

 

骨粗鬆症のように、カルシウムの代謝障害も関係している可能性がある。

カルシウムをうまく取り入れることができず、剥がれやすくなるのだ。

良性発作性頭位めまい症は中高年女性に多いが、骨粗鬆症が中高年女性に多いのと同じ理由だと考えられている。

 

良性発作性頭位めまい症の治療 三半規管に入ってしま耳石を追い出す

診断

患者さんにフレンツェル眼鏡という特殊な眼鏡をかけてもらい、頭の位置を動かしてめまいを起こし、眼球の動きを観察する。

小型のCCDカメラを使い、眼球の動きを記録することもある。

 

めまいが起きているとき、眼球は震るように小刻みに動いている。

三半規管と耳石器の神経は、目を動かす神経につながっているため、三半規管などに異常が起きると、目の動きに異常が起きてしまうのだ。

 

頭位治療

頭の位置をゆっくりと動かすことで、三半規管にたまっている耳石を移動させ、三半規管から出す治療だ。

フレンツェル眼鏡やCCDカメラで患者さんの眼球の動きを観察しながら、耳石が出る方向に頭を動かしていく。

眼球の動きを見ることで、耳石の位置がわかる。

 

たまっていた耳石が三半規管から出てしまえば、もう発作は起きない。

良性発作性頭位めまい症の7~8割は、この治療でよくなる。

 

 

良性発作性頭位めまい 同じ頭の位置をとらないよう日頃から常に頭を動かす

良性発作性頭位めまい症を予防するには、耳石が三半規管にたまらないように

する必要がある。

 

次のようなことに注意し、めまいの起こる位置に頭を動かさないことが、予防に役立つ。


1)同じ方向で横向きに寝ない  

いつも同じ向きで横向きに寝ていると、下側の耳の三半規管に耳石がたまりやすくなる。予防するためには、時々寝る向きを変えるか、あおむけに寝るようにする。

横向きに寝た姿勢で読書をしたり、テレビを見たりすると、同じ向きが続くことになりやすいので要注意だ。

 

2)頭の位置を高くする

寝るときに頭の位置を少し高くすると、耳石が三半規管に入りにくくなる。

枕を高くしたり、上半身に傾斜をつけて頭の位置を高くしたりすると、予防に役立つ。

 

3)寝返り運動を行う

頭をよく動かすと、耳石が1か所にたまりにくくなる。

10秒間ずつ頭の向きを変える寝返り運動は、耳石がたまるのを予防するのに効果的だ。まず左向きで10秒問、ゆっくりあおむけになって10秒間、右向きで10秒問、あおむけに戻って10秒間数える。

これをI回とし、10回程度続ける。

起床後と就寝前に行うとよい。

 

 

 

 

日頃からできる予防法は?

耳石が三半規管に入らないようにする

●同じ方向で横向きに寝ない

常に右を下にして横になってテレビを見るなど同じ頭の位置をとり続けると、耳石が1か所にたまり、内リンパ液の乱れが大きくなる。

 

●頭の位置を高くする

頭の位置が低いと、三半規管に耳石が入り込みやすくなる。

高めの枕にするとよい。

 

●寝返り運動を行う

起きたときと寝る前に寝床で行う。

左向きに寝て10秒間、あおむけに寝て10秒間、右向きに寝て10秒間、またあおむけになって10秒間保つ。

この一連の動きを10回行う。

 

めまいが起きたら、早く医師に相談する。

 

参考

きようの健康 2016.3

 

飯田政弘 東海大学教授

 

良性発作性頭位めまい症(BPPV)とは

https://medicalnote.jp/contents/160203-062-AF

・具体的な症状の特徴としては、

  起床時にクラクラするようなめまいが起こる

  寝返りをうったり、頭や体を動かしたりしたときにめまいが起こる

  一回一回のめまいの継続時間が短い(数十秒程度)

 という症状が挙げられる。


・起床時や睡眠時だけではなく、洗髪などで下を向いたときや、洗濯物を干すときに上を向いた

 頭位でめまいが誘発されることが多い。

 

・めまいに伴って吐き気や嘔吐の症状が出る場合もある。

 しかし、耳の聞こえが悪くなったり、意識や言葉、運動の障害を伴うことはなく、良性である

 ため基本的に大きな心配はいらない。

 

・半規管には、前半器官・後半器官・外側半規管と3つあり、BPPVが起きるのは主に後半器官

 と外側半規管だ。 

   BPPVは、自然経過でも2週間程度で治ると言われている。

   しかし最初に右の半規管で起こったものが、次は左の半規管で起こるということもある。

 

 もしおさまったものが再び起きた場合、「めまいがしないように」と動作が遅くなり、慎重

 になってしまいがちだが、それはめまいの改善に逆効果となる。

 めまいが起こることで耳石が元に戻る可能性もあるので、まずは普通の生活を2週間送ってみ

 て、それでも治らない場合は、再び診察を受けることが大切だ。