血管炎

ANCA関連血管炎

ANCA関連血管炎

https://www.juntendo.ac.jp/hospital/clinic/kogen/about/disease/kanja02_24.html

抗好中球細胞質抗体(antineutrophil cytoplasmic antibody, ANCA)は、好中球細胞質に対する自己抗体の総称であり、間接蛍光抗体法の蛍光染色パターンによりP(perinuclear)-ANCAC(cytoplasmic)-ANCAに分類される。

P-ANCAはmyeroperoxidase(MPO)、C-ANCAはproteinase3(PR3)を主な対応抗原とし、ELISA法によって測定する場合にはMPO-ANCA、PR3-ANCAと表記される。

それぞれ疾患特異抗体であるとともに、疾患活動性のマーカーとしても重要であり、臨床経過中も測定される。

 

疾患概念

2012年に改定された新たなチャペルヒル分類により小型血管炎は免疫複合体性血管炎群ANCA関連血管炎と総称される疾患群の2群に大別され、そのうち本項のANCA関連血管炎はさらに全身型と臓器限局型に大別されている。

 

全身型ANCA関連血管炎には顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis, MPA)、多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis, GPA)と好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis, EGPA)の3疾患がある。

 

前項のMPO-ANCAはMPAとEGPAの、PR3-ANCAはGPAの疾患標識抗体である。

一方、臓器限局型ANCA関連血管炎には腎にのみ血管炎を発症する病型としてpauci-immune型の壊死性半月体形成性糸球体腎炎が知られ、腎限局型血管炎(renal-limited vasculitis, RLV)と呼ばれる。

RLVはMPAの腎限局型とも考えられるがその疾患標識抗体もMPO-ANCAである。

※ごく稀にMPO-ANCA陽性のGPA、PR3-ANCA陽性のMPAは存在する。

 

各疾患の臨床的特徴

1.顕微鏡的多発血管炎(MPA)

好発年齢は55~74歳と高齢者に多い。

発熱、体重減少、易疲労感、筋痛、関節痛などの全身症状(約70%)とともに組織の出血や虚血・梗塞による徴候が出現する。壊死性糸球体腎炎が最も高頻度であり、数週間から数ヶ月で急速に腎不全に移行することが多いため、早期診断・早期治療が極めて重要である。

検査所見はCRPなどの炎症反応の上昇、血清クレアチニン上昇、MPO-ANCA上昇などがみられる。

 

2.多発血管炎性肉芽腫症(GPA)

好発年齢は男性30~60歳代、女性は50~60歳代が多い発熱、体重減少などの全身症状とともに、

①上気道の症状:膿性鼻漏、鼻出血、鞍鼻、中耳炎、視力低下など、

②肺症状:血痰、呼吸困難など、

③急速進行性腎炎、

④その他:紫斑、多発関節痛、多発神経炎によるしびれ・感覚異常、運動機能異常などが生じる。

一般的には①⇒②⇒③の順序で起こるとされる。

検査所見はCRPなど炎症反応上昇、PR3-ANCAの上昇がみられる。

画像所見では胸部レントゲンでの肺多発結節、副鼻腔CT・MRIで骨破壊性病変などを認める。

 

3.好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)

平成27年1月1日から指定難病とされた。

好発年齢は40~69歳。

喘息・アレルギー性鼻炎などのアレルギー性疾患が先行し、発熱や体重減少などの全身症状と多発単神経炎により知覚および運動障害、皮膚血管炎による紫斑などが見られる。

 

検査所見は末梢血の好酸球数の増加(数千以上)、CRPなど炎症反応の上昇、MPO-ANCAの上昇が見られる。

EGPAにおいてはMPO-ANCAの陽性頻度は40~50%程度と言われる。

組織所見(著明な好酸球浸潤を伴う細小血管の肉芽腫または壊死性血管炎)が決め手となることが多い。

 

 

 

(徳洲会グループ)