夏にかかるかぜとは?
かぜは冬にかかるものと考えがちですが、夏の時期に流行するウイルス感染症があり、これを一般に夏かぜといいます。
すなわち冬に流行するウイルスは寒冷・乾燥を好むのに対し、夏かぜのウイルスは高温・多湿を好むので、梅雨時から夏にかけて活動性が増しこの時期に流行するのです。
夏かぜの主な原因ウイルスは、エンテロウイルス属のエコーウイルス、コクサッキーウイルスやアデノウイルスで、これらのウイルスが夏かぜの代表的な症候であるヘルパンギーナや手足口病、咽頭結膜熱(一般に「プール熱」と呼ばれます)などを発症します。
ただし、これらの症候にはっきりと当てはまらなくとも、高熱、のどの痛み、せき、おう吐・下痢、目やに(眼脂)、発疹など、夏かぜウイルスによるとみられる症状や経過があれば、これらも含めて夏かぜとしていることが多いようです。
ヘルパンギーナは高熱とのどにできる水ぶくれ(水疱)が特徴で、しばらくすると水疱は破けて潰瘍になります。
のどの痛みが強く、水分を取ることができなくなってしまい脱水をきたしてしまうお子さんもいます。
年長児では発熱は軽度のこともありますが、低年齢では高熱になることが多いです。
手足口病は、手のひら、足の裏や口の中に2~3mmぐらいの赤い発疹や水疱を作ります。
手足の発疹に痛みやかゆみはありませんが、口の中の水疱は痛がることがあります。
高熱は少なく、微熱程度で全身状態は良いことがほとんどです。
咽頭結膜熱は発熱、のどの痛み、結膜充血などを特徴とし、夏季にプールを介して(プールの水やタオルの共用など)伝染したことから日本では「プール熱」と呼ばれています。
もちろん、プール以外でもウイルスで汚染した手指を介して感染しますので、感染者に接するときは注意が必要です。
夏風邪の対処法は?
夏かぜのウイルスを退治する有効な薬はありません。
これらのウイルスを退治するには、自分の持っている免疫力を高めて(主に血液の中に含まれているリンパ球の作用です)ウイルスが排除されるのを待つしかありません。
それには安静を保ち、栄養と水分を補給し、これ以上体調を崩さないように無理をしないことが大切です。
安静などの一般療法を行った上で、気道症状があればそれに対してせきを止める薬(鎮咳去痰薬)を、消化管症状には吐き気やおう吐を止める薬(制吐薬)や整腸薬を、発熱には解熱薬などを内服しますが、人それぞれに薬の必要、不必要がありますから、その判断は医師が行います。
多くの場合これら対症療法によって夏かぜは治っていくものですが、なかには水分摂取不良で脱水になったり、夏かぜウイルスによる髄膜炎や心筋炎などを合併して、治るどころかどんどん全身状態が悪化してくることもあります。
熱が長びいたり、おう吐が止まらなかったり、ぐったりしてくるようであれば医療機関を受診してください。
夏風邪の予防法は?
ウイルス感染の予防には大きく分けて2つあります。
ひとつは「ウイルスに接触しないようにする」ことで、もうひとつは「接触しても感染・発症する前にウイルスを排除させてしまう」ようにすることです。
まずはじめに、「ウイルスに接触しないようにする」ことですが、それにはウイルスが流行っている場所に近づかないことが一番です。
なるべくウイルスに接触しないようせきの飛沫に対してはマスクを用いたり、おう吐物、下痢などの処理にはゴム手袋を使用することなどの方法があります。
もちろん感染者とのタオルの共用などを避けるのは言うまでもありません。
そして「接触しても感染・発症する前にウイルスを排除させてしまう」方法ですが、それには手洗い・うがいが基本であり最も大切です。
さらに自分自身の免疫力が十分働けるように体力を維持しておくことも大事です。
それには十分に栄養と休養をとることが肝要です。
だるさを感じたようなときに、早めに就寝しておけば翌日には何でもなかったのに、無理をして夜更かしし翌日にひどく体調が悪くなってしまったといった経験は誰でもあるかと思います。
ウイルスを退治してくれるのは免疫力(主にリンパ球)です。
体力を保つようにし、免疫力が十分働けるような状態にしておけば、たとえウイルスが侵入してこようとしても、発症する前に免疫力により軽快してしまっていることも多いのです。
調子が悪いなと感じたときには無理をせず、おいしいものを食べて早く寝るというのも大切なことなのです。
また、夏にはよくエアコンを使用していると思いますが、気温の急激な変動も体調をこわしやすくします。
エアコンの設定はほどほどにして、冷えを感じるようなら足や肩の保温を行いましょう。
参考・引用
http://medical.itp.ne.jp/iryou/kisetsu-shoujou/natsukaze/
(小太刀 康夫先生 執筆)